私は、香水が嫌い。あの匂いを嗅ぐと、頭がクラクラする。それから、金木犀も嫌い。これも、同じ理由。金木犀がある道を、私は毎日、避けて行き来する。友達に変だ、って言われるけど、やっぱり、駄目だ。



今日は、日直。ラッキーなことに今日は、好きな人と一緒だった。

滝 「・・・・・・・・・。」

それは・・・、テニス部の滝 萩之介くん。今、私は日直日誌を書いている。そして、滝君は私の座っている前の席に座っている。・・・椅子ごと、こっちに向けて。

 「部活、いいの?」
滝 「今日は無いんだ。」
 「・・・そうなんだ。」

・・・部活、無いのか・・・・・・。好きな人といられる、それは、すごく嬉しいことなんだけど、・・・やっぱり、緊張するっていうか・・・。

滝 「・・・・・・。ウソ。」
 「えっ?」
滝 「実は、今日、ミーティングがあるんだけど、出たくないから。」

そういえば、さっき、テニス部の忍足君と向日君が「嫌だ」とか、なんとか言いながら、どこかに行くのを見た。

 「それって・・・、サボりじゃないの?」
滝 「・・・まぁ、そうかも。」
 「・・・・・・・・・。」
滝 「・・・・・・・・・。」

・・・嫌だな、この沈黙。・・・・・・・・・風で滝君の長い髪が揺れる。・・・・・・?

 「滝君、何か付けてる?」
滝 「ん?なんで?」
 「今、いい匂いがしたから。・・・シャンプー?」
滝 「・・・・・・。」

はっ!こんなこと言ったら、変態みたいじゃん!私の馬鹿・・・!

滝 「よく気付いたね。これに気付いた人は、家族以外では、さんが初めて。」
 「?」
滝 「実はこれ、香水なんだ。」
 「香水〜?」

私は、香水が嫌い。だけど、この匂いは好き。・・・なんで?

滝 「うん。ほんの少ししか付けてないんだけど。」
 「・・・私、香水ってあんまり好きじゃないけど、滝君のは好きだよ?」
滝 「俺も、あんまり香水って好きじゃないんだ。」

滝君も、香水嫌いなんだ、そう思うと、なんだか少し、嬉しくなった。でも・・・。

 「じゃあ、どうして香水付けてるの?」
滝 「実は、姉に貰ったんだよね。」
 「お姉ちゃん、いるんだ〜。」

なんか、滝君のことがわかって、得した気分だ。

滝 「うん。ずっと前、姉と買い物してたんだ。そしたら、姉が『どの香水が好き?』って聞いてきたんだよね。でも、俺は香水好きじゃないし、どうしようかと思ったんだけど、1つマシな物があったから、『それ。』って言ったんだ。・・・で、誕生日にくれたわけ。」
 「へぇ〜。仲良いんだね。」
滝 「でも、俺が香水嫌いなこと知らなかったし、仲良いのか、どうなのか。」

そう言って、滝君は微笑んだ。

 「でも、やっぱり、羨ましいな。」
滝 「そうでもないよ。だって、この香水、毎日付けないと、姉がうるさいんだよ。だから、少しだけど付けてるんだ。」
 「なるほどね。」

今日は、滝君のこと、たくさん聞けて、すごく嬉かった。・・・それだけで、よかったのに・・・・・・。

滝 「ねぇ、さん。今日、一緒に帰らない?」
 「えっ?」
滝 「嫌なら、いいんだけど。」
 「そんなことないよ!一緒に帰ろう?」

つい、言ってしまったが、一緒に帰るなんて、すごく緊張するって・・・!


・・・と、いうことで、一緒に帰ることになりました。

 「そういえば、部活。途中からでも出た方がいいんじゃ・・・?」
滝 「うん。でも、今日は日直があるから休む、って言ってきたんだ。」
 「そっか。じゃあ、安心して帰れるね。」
滝 「安心って・・・。クスクス。」

ほら〜・・・!緊張して、何言ったらいいか、わからないよ!

 「・・・・・・・・・。」
滝 「うん、安心して帰れるよ。」

そう、滝君は言ってくれた。・・・なんか、気を遣わせちゃってる・・・・・・。
そして、しばらく、クラスの話をしていたら、ある物を見つけてしまった・・・。しかも、地面に落ちてる、いっぱい。

滝 「・・・どうしたの?」
 「ん?・・・別に、何でも。」

滝君は、その後、嬉しそうに言った。

滝 「あっ。金木犀だ。」

そう。金木犀があった。いつも、この道は避けて通るのに、滝君と一緒だから、忘れて来てしまった。

 「・・・・・・。」
滝 「さん、金木犀のこと見てたよね。好きなの?」
 「ううん。・・・あんまり。香水みたいで・・・・・・。」
滝 「そうなんだ。・・・俺は、好きだよ。金木犀。」
 「そう・・・。」

さっきは、香水が、あまり好きじゃない、って同じ考えだったけど、金木犀は違うんだ。そう、思うとなんか、淋しくなった。別にさっきだって、偶然なのに。

滝 「俺の金木犀も、こんな風に咲くといいな。・・・なんちゃって。」
 「・・・?滝君の家にも金木犀、あるの?」
滝 「ないよ。」
 「?」

私は、さっぱりわからない、という顔をしていたようだ。滝君が、少し微笑んで、答えてくれた。

滝 「金木犀の花言葉、知ってる?」
 「・・・知らない。」

と言うか、金木犀以外の花言葉も知らない。ここは、女の子として、知っておいた方がよかったのかな・・・。

滝 「そう。俺、男なのに、変かな。」
 「そんなことないよ。素敵だと思う!・・・それで、どういう意味なの?」

どうやら、滝君は、私の逆のことを考えていたようだった。

滝 「・・・・・・初恋。」

私は、しばらく考えていたけど、やっと意味がわかった。

 「・・・なるほど。初恋の花を咲かせたいってことね。・・・滝君、かっこいいこと言うね。」
滝 「そう?・・・それじゃ、さんは、その花を咲かせる、太陽になってくれない?」
 「・・・もちろん、OK!滝君が好きな子と両想いになれるように、協力するよ!」
滝 「本当?ありがとう。」

「もちろん」なんて言ったけど、本当は辛い。だって、私、滝君のことが好きなんだもん。

 「でも、具体的に何したらいい?応援だけでもいいかな?」

滝君が幸せになるなら、それでもいいや。・・・やっぱり、辛いけど。だから、応援だけ、頑張ってみるよ。

滝 「具体的に言うと・・・・・・。・・・俺と付き合ってほしい。」
 「・・・・・・・・・。」
滝 「ダメ・・・かな・・・・・・?」
 「付き合うって、何処にとかじゃなくて?」

私は、信じられなくて、そう問いた。

滝 「うん。そうじゃなくて。俺、さんのこと、前から好きだったんだ。だから・・・、付き合ってくれない?」
 「・・・私も滝君のこと、前から好きだった。」
滝 「じゃあ・・・。」
 「あの・・・。・・・・・・よろしくお願いします。」
滝 「こちらこそ。」

そう言って、滝君が微笑んで、私はやっと、正気に戻った。そして、嬉しさのあまり、涙が出てきた。

 「ご、ごめん・・・・・・。・・・嬉しくて。」
滝 「俺も、泣きたいぐらい、嬉しいよ。それから、神様にも感謝。今日、さんと日直させてくれて、ありがとう。」
 「ハハハ。そうだね。」

私は、泣いているのか、笑っているのか、自分でもわからなくなってしまった。それだけ、嬉しかったのだ、と改めて思った。



私は、香水が嫌い。あの匂いを嗅ぐと、頭がクラクラする。だけど、1つだけ好きなのがある。それは、滝君が付けている香水。滝君が好きだから、なのかもしれないけれど。それから、金木犀も嫌い。これも、同じ理由。金木犀がある道を、私は毎日、避けて行き来する。友達に変だ、って言われるけど、やっぱり、駄目だ。だけど、最近は、その道を通ることにした。1人ではなく、滝君と。













 

香水や金木犀が好きな方は、感情移入(?)しにくくて、すみません・・・。
私があまり好きではないので、つい・・・。
とりあえず、金木犀の花言葉が「初恋」っていうのを使いたかったんです!

それにしても、オチがあまいですね;;「だから、何だ?」みたいな・・・(笑)。
まぁ、全体的にも微妙ですけどね!・・・すみませんorz